オイルへの水分混入と故障発生プロセス
潤滑油に水分が混入すると、オイルの物性変化・潤滑不良・摩耗の進行といった一連の悪影響が連鎖的に発生し、最終的には機器故障につながります。
この記事では、水分混入から故障に至るまでの典型的なプロセスをご紹介します。
1. 水分の混入
オイルへの水分混入は、以下のような様々な経路から発生します。

- 結露による水滴の発生
- 冷却水の漏れ
- シール不良
- 洗浄水の混入
- 外気からの湿気吸収
これらにより、油中に水滴や乳化が形成されます。水分はオイルと完全には混ざらず、エマルジョンの状態※で存在し、劣化を引き起こす原因となります。
※液体中に別の液体が微小な液滴として分散している状態
2. オイルの性状変化(初期劣化)
水分混入後、オイルの物性は短期間で以下のように変化し始め、本来の性能を十分に発揮できないようになります。

- 粘度低下
油膜形成能力が弱くなる(高粘度油ではゲル化して粘度が上がる場合も) - 乳化・白濁
劣化の兆候としてオイルの透明性が失われる(清浄分散剤が多いと乳化しやすく、タービン油などは乳化しにくい) - 酸化の促進
水分と金属(鉄や銅)と高温が揃うことにより酸化反応が進行 - 添加剤の分解・消耗
防錆剤・酸化防止剤などが機能を失う
3. 潤滑不良の発生
水分には潤滑性がなく、油膜の形成ができません。そのため水分が混入したオイルは、油膜が切れやすくなり、摺動部の潤滑状態も急速に悪化します。

- 油膜が薄くなる・切れる
- 摩擦係数の上昇
- 金属表面が直接接触する「境界潤滑状態」へ移行
結果、摩耗が急激に進行し、機器の寿命を大きく縮めます。
摩耗粉の増加による悪循環
潤滑不良状態により摩耗が進行すると、金属摩耗粉が大量に発生し油中に蓄積します。
そして、「摩耗 → 摩耗粉の増加 → さらなる摩耗」という悪循環を引き起こします。
- 鉄粉・銅粉などの摩耗粉が増加
- 摩耗粉が摺動面に入り込み、研磨剤のように作用
- ポンプ・バルブなどのクリアランス(間隙)が崩れ、性能低下へ
4. 腐食や錆の発生
油中に水分が存在すると、金属表面で腐食反応が進行します。
腐食は摺動面の平滑性を損ない、摩耗を加速させるだけでなく、部品寿命も大幅に縮める劣化現象です。特に鉄系部品は水分に敏感なため、短期間で劣化が進みます。

- ベアリングのピッチング(孔食)※
- バルブ内部の腐食
- ポンプ内部に錆が発生
※金属表面にごく小さな孔(ピット)が発生し、内部へ深く進行していく腐食現象
5. キャビテーション・異常振動・異音の発生
水分が油中で気泡化すると、ポンプ内部でキャビテーション※が発生します。気泡が潰れる際の爆縮は、部品表面を破壊しながら以下のような現象で機器の安定運転を妨げます。
- キャビテーション音の発生
- 振動の増加
- 圧力変動
- 流量低下
また、これらの現象はポンプ破損の前兆です。運転継続は重大なリスクを伴います。
※液体中に圧力変動が生じることで気泡が発生し、その後崩壊する現象
6. 重大な機器故障へ(終末段階)
水分混入を長期間放置すると、これまでご紹介してきた異常が次々と発生し、最終的に、重大な機器故障へ至ってしまいます。

- ポンプの焼き付き
- ベアリング破損
- バルブ固着
- 作動不良・停止
- 異常発熱
水分混入は“静かに進む重大トラブル”
水分混入は、初期段階では見逃されやすいトラブルです。
しかし、放っておくとオイルの劣化・潤滑不良・腐食・キャビテーションなど、複数の劣化要因を連鎖的に引き起こし、摩耗の急進、部品寿命の短縮、最終的な機器故障にまでつながる重大トラブルと言えます。
早期検知と除去は、設備保全における最重要項目の1つ
設備保全において、機器の故障による稼働停止は絶対に避けたい事象です。
これらの根本原因となりやすい水分混入の早期検知と除去は、最重要項目の1つとして対策を事前に練っておくことが必要でしょう。
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